民法改正と契約書見直しの基本

2020年4月から改正民放が施行されました。主に債権法分野で重要な改正が行われており、法律が変わればビジネスにおいても新しい法律に対応しなければなりません。特に契約書に関する業務は民法改正の影響を受けやすいため注意が必要です。
この記事では、契約書の管理・運用に関わる民法改正の概要や民法改正に対応するためのポイントをご説明します。

契約書業務との関係で重要となる民法改正の内容

改正内容は多岐に渡りますが、ここでは契約書業務にダイレクトに影響する可能性が高い改正内容の概要を解説します。

定型約款に関する規定の新設

利用規約や約款という名称でサービスのルールを顧客に適用している事業者は多いかと思います。不特定多数者を相手とする取引において約款を有効に適用させるためには、約款を契約の内容とする旨の合意、若しくは予め定型約款を契約の内容とすることを表示する必要があります(新民法548の2第1項)。

他にも約款の変更や約款開示請求など、約款に関する規定が設けられましたから、約款を用いている事業者は注意が必要です。

瑕疵担保責任から契約不適合責任への変更

売買契約や請負契約など、多くの契約で用いられていた瑕疵担保責任に関する規定が契約不適合責任へと変更され、買主や注文者側の救済手段が明文化されました。

従来「瑕疵」の意義が必ずしも明確ではありませんでしたが、今回の改正により、売主側が責任を負うのは“契約に適合しない物を売ったとき”と明らかになりました(新民法562条等)。責任の有無が契約でどのような内容を定めたのかに左右されることになるので、契約書の重要性が増したといえます。

また、この改正により「瑕疵担保責任」という用語は法律上使用されなくなりました(民法の改正に合わせて商法の規定も契約不適合責任へ変更されました)。法律上存在しない文言を契約書で用いると、民法上の責任とは別に特別の責任を定めたとも解釈できてしまう場合もあり得ます。そのため、今後新しく契約を締結する際は「瑕疵担保責任」や「瑕疵」といった文言ではなく「契約の内容に適合しない」等の文言を用いた方がよいでしょう。

賃貸借契約における地位の移転に関する規定の新設

従来も判例法理により、不動産の賃貸借においてその不動産が譲渡された場合、賃貸人の地位は譲渡人(旧所有者)から譲受人(新所有者)に移転し、その場合賃借人の同意は不要とされていましたが、これを新民法605条の2で明文化されました。

また、この場合において賃貸人の地位を旧所有者に留保することができることとしました(同条2項)。これにより、投資目的のオーナーチェンジがあった場合などにも、多数の賃借人の合意を得る必要がないなどの利点があります。

契約書の管理・運用上のポイント

次に、民法改正を受けて、既存の契約書の効力や契約を締結し直した方がよいケースなど、契約書業務のポイントをご説明します。

改正前に締結した契約はなお有効

改正民法が施行された2020年4月1日以前に締結された契約は、改正民法施行後も有効です。そして、この契約には旧民法が適用されますので、改正の影響は受けません。

契約を締結していない場合でも、施行前に生じていた債権や債務にも旧民法が適用されます。

契約の更新をすると改正民法が適用される

上記の通り、改正民法施行前に締結された契約には旧民法が適用されます。しかし、この契約が更新された場合は改正民法が適用されます。自動更新も同様です。そのため、契約の有効期間を確認し、更新する際には改正民法に照らし合わせ問題ないか確認する必要があります。

契約書を締結し直した方が良いケース

改正民法施行前の契約は改正の影響を受けません。しかし、法律上そうであるからといって、当事者間で疑義が生じないとは限りません。契約書の文言や旧民法と改正民法のどちらが適用されるのか等、当事者間で理解の違いが生じ紛争に発展することも考えられます。もし当事者同士が違う理解や考え方であるならば、改正民法に適応した新しい契約を締結し直すと良いでしょう。

まとめ

この記事では、契約書の管理・運用に関する改正民法の概要や契約書を用いる上での注意点を解説しました。契約書は取引の内容を明確にしてトラブルを未然に防ぐだけでなく、紛争となったときには強力な証拠となります。

これから、年末や年度末を控え、契約期間の満了期日や更新期日を迎える事例も少なくないと思います。自社・ご自身の利益を守るためにも、この機会に既存の契約書を見直してみてはいかがでしょうか?

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