ランドオペレータ(旅行サービス手配業)の登録を受けるには
ランドオペレーターとは、旅行業者の依頼を受けて、運送や宿泊その他旅行関連サービスの手配を行う事業や事業者のことです。正式には「旅行サービス手配業」といいます。
ランドオペレーターは、2018年初から都道府県知事の登録を受けることが必要となりました。但し、旅行業の登録を受けている者は、重複して登録をする必要はありません。
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ランドオペレーターとは?
ランドオペレーターの業務
ランドオペレーター(旅行サービス手配業)業務とは、海外を含む他の旅行会社等のために、
・運送(鉄道、バス等)または宿泊(ホテル、旅館等)の手配
・全国通訳案内士または地域通訳案内士以外の有償によるガイドの手配
・免税店における物品販売の手配
などを行う業務です。
例えば、海外から日本を訪れるツアーを企画する場合に、日本での交通手段や宿泊先などは、日本の事情に通じた業者に手配を依頼したほうが海外の旅行会社にとって効率的です。このように、旅行先現地での運送、宿泊などの手配を旅行会社から受託して行うのがランドオペレーターです。
海外の旅行会社は、ランドオペレーターが手配する運送や宿泊などに、自国と日本間の航空便などの計画を加えることで、日本へのパッケージツアーが出来上がる、といった具合です。
このように、旅行会社に対する旅行関連サービスの手配を提供するのが、ランドオペレーター業務ということになり、これを日本国内で行うには、前述の通り2018年から都道府県知事の登録が必要になりました。
ランオペはなぜ登録制度に?
旅行業法では以前から旅行業、旅行業者代理業を観光庁長官または都道府県知事の登録を要すると定めていました。
旅行業法の大きな目的は消費者(=旅行者)保護で、そのために、旅行業登録には基準資産額の制度や、営業保証金の供託など、経営の安定と賠償能力の担保を求める要件が決められています。
これに対して、ランドオペレーターは旅行業者が相手のビジネスであり、消費者保護法の性格の強い旅行業法の規制対象とされていませんでした。
ランドオペレーターが登録制に移行した大きなきっかけの一つが、2016年の軽井沢スキーバス事故です。この事故に限らず、旅行業界の激しい競争等を通して、バス運行会社は下限割れ運賃での契約を余儀なくされるなど、結果として安全管理がおろそかになったこと、またランドオペレータの実態把握も不十分であったことなどの反省がありました。
また、訪日旅行者の増大に伴って、免税店への連れ回しなどがあり訪日客からのクレーム件数も増大していました。その裏では免税店からのランドオペレーター・ガイド等への高額のキックバックの存在などもあったのです。
このような背景から、ランドオペレーターの登録制が導入され、旅行サービス手配業務取扱管理者の選任が必須となるなど、旅行業法の規制の対象となりました。
無登録業者に対する罰則
登録を受けずに旅行サービス手配業を営んだ者には、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されることとなりました。
ただし、冒頭にも書いたように、旅行業の登録を受けている場合は、旅行サービス手配業務を行うために重複して登録を受ける必要はなく、旅行業登録があることによってこの業務を行うことが出来ます。
また、旅行業者代理業の登録を受けている事業者は、所属旅行業者のために行う旅行サービス手配業務を行う限りにおいて、別途登録をする必要はありませんが、他の旅行業者のために行う場合は、旅行サービス手配業の登録を受けることが必要となります。
ランドオペレーターの登録を受けるには?
旅行サービス手配業を行うためには、都道府県知事の登録を受けることが必要ですが、以下の登録拒否事由に該当すると登録を受けることが出来ません。
登録拒否事由
- 旅行業法の規定により旅行業、旅行業者代理業、旅行サービス手配業の登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者(登録を取り消された者が法人である場合、取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内にこの法人の役員であった者で、当該取消しの日から5年を経過していないものを含む。)
- 禁錮以上の刑に処せられ、又は旅行業法の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終り、又 は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
- 暴力団員等(暴力団員又暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)
- 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記1-4のいずれかに該当するもの
- 心身の故障により旅行サービス手配業を適正に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 法人であつて、その役員のうちに第六条第一項第一号から第四号まで又は前号のいずれかに該当する者があるもの
- 営業所ごとに旅行業法第28条の規定による旅行サービス手配業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者
新規登録申請に際しては、上記の登録拒否要件の他、次のことに注意しておきましょう。
・旅行サービス手配業務取扱管理者については、登録拒否要件として「確実に選任すると認められない者」とありますが、実務上は、新規登録申請書の添付書類として「選任一覧表」が必要です。
・法人が登録申請する場合、定款の事業目的は『旅行サービス手配業』又は『旅行業法に基づく旅行サービス手配業』とすることが必要です。
登録手続き
登録申請先
登録申請先は、主たる営業所の所在地の都道府県知事です。窓口は都道府県庁の観光部等の部署になりますが、埼玉県の場合、主たる営業所の所在地により県庁ではなく、県内9か所の地域振興センターが窓口になる場合があります。
都道府県によって、予約制または曜日指定で受け付けている場合があります。
登録申請に必要な書類
埼玉県の例ですが、登録申請には以下の書類が必要です(下記は東京都の例。都道府県によって多少異なります)。
- 新規登録申請書(1)
- 旅行サービス手配業者登録簿(1)
- 新規登録申請書(2) :主たる営業所以外の営業所がある場合
- 旅行サービス手配業者登録簿(2)
- 定款又は寄附行為 :法人のみ
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本):法人、 住民票:個人
- 宣誓書(法人は監査役含む全役員、個人は事業者(申請者)本人、各自署が必要)
- 旅行サービス手配業に係る事業の計画
- 旅行サービス手配業に係る組織の概要
- 旅行サービス手配業務取扱管理者選任一覧表 :研修の修了証等を添付
- 営業所の使用権を証する書類 :登記事項証明書(自己所有)または賃貸借契約書等
- 事故処理体制の説明書
埼玉県の書式、記載内容等は…「埼玉県 旅行業者代理業新規登録申請」にてご確認下さい。
登録手数料
埼玉県では、15,000円で、登録申請時に埼玉県収入証紙で持参します。東京都では新規登録通知書受領時に現金持参し納付します(東京都も15,000円)。
登録までの期間
新規登録申請が受理されてから登録完了までの標準処理期間は、東京都では30~40日とされています。
旅行サービス手配業務取扱管理者
旅行サービス手配業務取扱管理者の配置基準と業務
ランドオペレーターは、営業所ごとに1名以上の旅行サービス手配業務取扱管理者を選任しなければならない、とされています。従業員10名以上の営業所には2名以上の旅行サービス手配業務取扱管理者を選任する必要があります。
そして、事業者は手配業務取扱管理者に
を行わせなければならない、とされています。
旅行サービス手配業務取扱管理者になるには?
旅行サービス手配業務取扱管理者は、観光庁長官が登録を行っている登録研修機関が実施する研修の課程を修了した者か、または、旅行業務取扱管理者の有資格でその営業所で取り扱う業務に応じたものでなくてはなりません。
登録研修機関の行う研修
研修は、下記の6団体が行っており、2日間の研修で最後の1時間に終了テストが行われます。
旅行サービス手配業務取扱管理者 登録研修実施機関
実施機関
- 一般社団法人日本旅行業協会
- 有限会社インターナショナルツアーアシスタンス
- 一般社団法人日本海外ツアーオペレーター協会
- ジェイエコツアー株式会社
- 一般社団法人全国農協観光協会
- JCIT株式会社
- 一般財団法人日本旅行業振興協会
登録研修の主な内容(例)
1日目 :旅行業法および旅行業約款(旅行サービス手配業務取扱管理者の責務と役割を含む)
2日目 :旅行サービス手配実務(運送・宿泊手配・出入国手続等の関係法令・約款、安全対策等)、終了テスト(1時間)
旅行業務取扱管理者を選任する場合
旅行サービス手配業務取扱管理者は、旅行業務取扱管理者試験の合格者から選任することもできます。その場合、その営業所で扱う業務により、次の通り選任することが必要です。
1.日本国内の旅行のみについての旅行サービス手配業務を取扱う営業所
→ 総合旅行業務取扱管理者試験合格者または国内旅行業務取扱管理者合格者
2.上記1以外の営業所
→ 総合旅行業務取扱管理者合格者
まとめ
当事務所では、旅行業、旅行業者代理業、旅行サービス手配業の新規登録や、営業開始後の各種届出等の書類作成や申請手続きを、忙しい事業者の皆様に替わって承っております。お問合せはお気軽に下記までお願いいたします。
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