旅行業とは? :旅行業登録のキホン知識【2023年版】

「旅行会社」や「旅行代理店」といわれるビジネスは、法律上は「旅行業」といいます。旅行業務を行う事業者は「旅行業者」として、旅行業法に基づいて観光庁長官または都道府県知事による旅行業登録を受けることが必要です。

私どもでは、旅行業の登録申請のお手伝いをいたしております。このページでは旅行業を理解するためのキホンを解説していきます。

旅行業務とはなにか

旅行業とは、観光庁の定義によれば、”「報酬を得て」、「旅行業務」を行う「事業」”をいいます。

事業ですから、継続・反復的に行いますし、無料ではなく対価(報酬)を得て行うものです。あとは、「旅行業務」というのが何かがわかれば、”旅行業”の定義がおおかたわかりますね。

旅行業務には、大きく分けて以下の通り「基本的旅行業務」、「付随的旅行業務」、「相談業務」の3つがあります。

基本的旅行業務

最初に「基本的旅行業務」です。以下のⅠ.のサービスを対象に、以下のⅡ.ような業務を行うことをいいます。

Ⅰ.基本的旅行業務で取扱う「サービス」

  • 旅行のための移動手段=交通機関のサービス(=「運送サービス」といいます)
  • 旅行の先での宿泊(=そのまま「宿泊サービス」といいます)
  • 運送サービスと宿泊サービスの組合せ(=「運送等サービス」といいます)

Ⅱ.基本的旅行業務で行う「業務」

  • 旅行者が運送・宿泊サービスを利用できるように、代理、媒介、取次ぎ、利用を行うこと。
  • 運送・宿泊サービスを提供する事業者が、利用者にサービス提供できるように、代理、媒介、取次ぎをおこなうこと。
  • 対象サービスを自己で契約し、これらを組合せた上で日程などの計画と対価を設定した旅行商品として旅行者に提供すること。

提供対象のサービス(運送、宿泊、その組み合わせ)を、旅行者が利用できるように代理契約、媒介、取次ぎなどする旅行を「手配旅行」といいます。旅行業者は「手配をする」位置づけです。

これに対して、目的地を設定して運送、宿泊サービスなどの利用日程等を計画し、それを自己の責任で契約して対価を定めて旅行者に提供するものが「企画旅行」というものです。

このように、提供サービスとその提供方法により旅行商品の種別がいくつかに分かれますが、これについては下記の「旅行商品の種類」で説明しています。

以上が、基本的旅行業務というものです。ただ、特に企画旅行の際には途中で食事をしたり、観光施設を見学したりすることが多いですよね。このように、基本的旅行業務に「付随して」提供するものを「付随的旅行業務」といいます。以下にこれを解説します。

付随的旅行業務

基本的旅行業務に付随して行う、運送等サービス以外の関連サービス(例えば、目的地でのレストラン利用や、観光施設入場など)の提供契約を行う行為や、それらのサービスの代理・媒介・取次行為が「付随的旅行業務」となります。また、同様に基本的旅行業務に付随して行うパスポート、ビザの取得代行や添乗業も付随的旅行業務です。

旅行の一環として(=基本的旅行業務に付随して)提供するレストラン利用手配や観光施設入場の手配は旅行業務に該当しますが、本的旅行業務とは別にレストラン利用や観光施設入場等のみを提供することや、運送事業者自身が行う運送サービスの提供などは、旅行業務にあたりませんので、旅行業登録を受ける必要はありません。基本的旅行業務に付随して行う場合には旅行業登録が必要となる、ということです。
 (旅行業務に該当しない例:スポーツ観戦の入場券のみの販売、バス会社が行う日帰りバスツアー)

相談業務

有償で、旅行日程の作成、旅行費用の見積り等の旅行の相談に応じる行為を行う場合、これは相談業務として旅行業務にあたります。

旅行商品の種類

ここまで、旅行業務とは何かという視点で書きながら、旅行商品の種類についても簡単にふれましたが、それぞれを整理してみたいと思います。

募集型企画旅行

旅行者の募集のためにあらかじめ、旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(運送等サービス)や、それ以外の旅行関連サービス(運送等関連サービス)の内容並びに旅行者が旅行業者に支払うべき旅行代金の額を定めた「旅行に関する計画」を作成して実施する旅行をいいます。
(例:パッケージツアー)

旅行業者は、計画に盛り込んだ運送等サービスおよび運送等関連サービス(旅行サービス)が確実に提供できるよう、これらの「自己の計算において」サービス提供者との間で契約し、旅行者に旅行サービスを提供します

自己の計算においてとは」、旅行業者がサービス提供者と自由に交渉してそのサービスの価格等の取引条件を合意し、それをもとに作成する企画旅行の販売価格も旅行業者が自らのリスクで任意に設定して旅行者に販売することを言います。
(手配旅行では対象となるる旅行サービスの価格は、旅行業者は決定できません。手配旅行の欄をご参照ください)

受注型企画旅行

旅行者からの依頼により、旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受ける ことができる運送又は宿泊のサービスの内容並びに旅行者が旅行業者に支払うべき旅行代金の額を定めた旅行に関する計画を作成して実施する旅行です。(例:団体旅行や修学旅行)

受注型企画旅行も募集型企画旅行と同様に、旅行業者は「自己の計算において」旅行サービス提供者との間で契約を締結し、旅行者に旅行サービスを提供する契約を締結します。

手配旅行

旅行者の委託により、旅行者のために代理、媒介又は取次をすること等により旅行者が運送・宿泊機関等の提供する運送、宿泊その他の旅行に関するサービスの提供を受けることができるように、手配を引き受けるものです。
(例:航空券、宿泊の単品手配)

手配旅行の場合は、旅行業者が「自己の計算において」行うものではなく、「他人の計算において」旅行サービスを手配する契約であるとされています。このため、手配旅行では、運賃や料金、宿泊料その他のサービスの価格は、サービス提供者が定めている価格で販売し、それに手配の対価としての旅行業務取扱料金を加えた合計額のみを旅行代金として請求できるものとされています。そして、その契約書面には、個々のサービスの対価と旅行業務取扱料金の内訳を明示する必要があるとされています。

旅行業者の種別

旅行登録の種別は第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業の4種類となっており、それぞれの登録を受けた旅行業者が取扱うことができる旅行業務の範囲は、下表のとおりです。

旅行業の種別と業務範囲

旅行契約による区分(募集型企画旅行、受注型企画旅行、手配旅行)と旅行先の地理的な範囲(海外、国内、国内の限定地域)の組合せとで区分される業務の範囲ごとに、旅行業の種別による取扱いの可否が決まります。

第1種旅行業では、海外の募集型企画旅行を含め、すべての旅行業務を取扱うことができます

第2種旅行業登録では、海外の募集型企画旅行を除いた旅行業務を取扱うことができます。

第3種旅行業登録では、募集型企画旅行の範囲が、主たる営業所の所在する市区町村とその隣接市区町村の区域において実施されるものに限定されます。受注型企画旅行と手配旅行には制限はありません。

地域限定旅行業者登録を受けた場合には、募集型企画旅行は第3種と同じ範囲、さらに受注型企画旅行・手配旅行も、主たる営業所の所在する市区町村とその隣接市区町村の区域において実施されるものに限定されます

どの種類の旅行業登録を受けた場合でも、他社の募集型企画旅行の海外旅行、国内旅行とも、それを企画した旅行業者から受託して販売(いわゆる「代売」)することは可能です。

旅行業登録の種別により、上表の通り取扱える業務(旅行商品)の範囲が異なるほか、旅行業登録の申請先(登録権者行政庁)と、登録要件(営業保証金、基準資産額)が異なります。

また、旅行業登録の種別により、基準資産の額、営業保証金または弁済業務保証金分担金の金額が異なります。くわしくは下記のリンクで内容をご確認下さい。

基準資産額について

営業保証金と弁済業務保証金分担金

旅行業登録の申請

登録申請先(登録行政庁)

登録申請先

 ・第1種旅行業登録 ・・・・・・・・・・ 観光庁長官
 ・第2種、第3種、地域限定旅行業登録・・・ 都道府県知事(主たる営業所所在地の)

申請窓口

第2種・第3種・地域限定旅行業の登録は、主たる営業所の所在地の都道府県知事あてに申請しますので、多くの場合都道府県庁が窓口になりますが、埼玉県の場合のように、さいたま市及びその周辺は埼玉県庁の観光課、それ以外は埼玉県内9カ所の地域振興センターが申請書の提出窓口になる、といった場合もあります。あらかじめ県庁の観光所管部門に確認しておきましょう。

参考:埼玉県の旅行業登録申請先

登録申請に必要な書類は…

旅行業登録が完了したら…

旅行業の登録申請が受理され登録まで、標準処理期間は東京都の場合30~40日とされています。埼玉県の場合、県のWEBサイト上に明示がありませんが、3週間程度で登録完了することもあります。

登録が完了すると、登録先行政庁から「登録通知」が交付されますので、これを受け取ってから14日以内に、営業保証金の供託または弁済業務保証金分担金の納付を行い、その旨を行政庁に届出します。

その他に、登録票、旅行業務取扱料金表を作成し、事務所に掲示を行えば、営業が開始できます。

まとめ

旅行業とは、”報酬を得て” “旅行業務” を行う事業”であり、その種別により取り扱える業務の範囲が異なるということと、旅行契約の区分と旅行先の区分に関して解説してきました。

これで、旅行業とは何かと、取扱いたい旅行商品により、どの種類の旅行業登録が必要になるか、というところはおわかりいただけたのではないかと思います。

旅行業法は旅行業の他にも、旅行業者代理業旅行サービス手配業(ランドオペレーター)についてもその定義や登録要件を定めていますので、それらとの違いもざっと押さえておいた方が良いかもしれません。
また旅行業の登録要件は財産的要件を中心になかなかハードルが高く、必要な書類も少なくなく容易な手続きではありません。登録の要件や手続きは、旅行業の登録 で解説しています。

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