旅行業 営業保証金と弁済業務保証金分担金
旅行業は多数の旅行者(=消費者)に、比較的単価の高い商品を販売するビジネスであり、旅行業法は消費者保護法としての性格を強く持ちます。旅行業登録の要件としては、基準資産額制度を定めて、旅行業者に一定の財産的基礎を要求しています。
基準資産額を始めとした登録要件を満たして旅行業登録を受けた旅行業者は、営業開始までに営業保証金を供託するか、または旅行業協会に加入した上で弁済業務保証金を納付することのいづれかを行わなければなりません。これらの制度について以下に説明していきます。
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営業保証金と弁済業務保証金分担金
旅行業は、比較的単価の高い商品を多くの旅行者に販売するビジネスで、さらに代金は前払いで収受されることも多いです。このため、旅行者保護のため、旅行業法は営業保証金と弁済業務保証金分担金という2つの制度を設けています。旅行業者は旅行業登録通知を受けた後、営業開始までにそのいずれかを選択して実行しなければなりません。
営業保証金について
例えば旅行会社が倒産して未実施の旅行サービスを提供できなくなった場合などに、旅行者は旅行業者が供託した営業保証金から旅行代金等の範囲で弁済を受けることができる制度です。
新規の旅行業登録の場合、登録の通知を受け取ってから14日以内に営業保証金を供託所に供託し、供託したことを登録先の行政庁に届出なければ営業開始することはできません。
営業保証金の金額は、第1種、第2種、第3種、地域限定の旅行業登録の種別ごとに決まっており、さらに「旅行者との取引の額」が大きくなるほど供託が必要な営業保証金も大きくなるように決められています。以下に、最低額のみ記します。
◆営業保証金最低額(旅行者との取引額2億円未満(地域限定のみ400万円未満)の場合)
第1種 | 第2種 | 第3種 | 第4種 | |
---|---|---|---|---|
営業保証金の額 | 7000万円 | 1100万円 | 300万円 | 15万円 |
(最低額以降の詳細は下のリンクからご確認ください) http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/sangyou/content/001308292.pdf
営業保証金額の基準となる「旅行者との取引の額」とは、既存旅行業者では前年度の取引額(実績)、新規登録の場合は、登録申請時に添付した事業計画に記載した年間取引見込額となります。
新規旅行業登録の場合は別ですが、営業保証金が前年の旅行者との取引額により決まるため、供託すべき営業保証金の額も年度によって変動することがあります。この場合、供託済みの営業保証金の額に対して、営業保証金が不足する場合は差額を追加で供託し、逆に新しい営業保証金の額の方が小さい場合は差額を取戻すことができることになります。
営業保証金は現金の他、国債証券、地方債証券などによっても行うことができます。
営業保証金供託届
前述の通り、営業保証金を供託する場合、旅行業登録の通知を受けてから14日以内に「営業保証金供託完了届出書」を登録先行政庁に提出します。
弁済業務保証金分担金について
営業保証金制度は旅行者保護を図る目的で定められたものですが、大きな金額を供託しなければならず、旅行業者にとっても重い負担となります。この負担を軽減するものが、弁済業務保証金分担金というものです。
旅行業者が旅行業法により指定を受けた旅行業協会(現在、JATA と ANTAの2団体)の会員になり、弁済業務保証金分担金を納付すると、旅行業協会がこの分担金を弁済業務保証金として供託します。旅行業者は弁済業務保証金分担金の納付をもって、営業保証金の供託に替えることができます。このとき、弁済業務保証金分担金は営業保証金の5分の1の額とされていますので、資金面の負担は大きく軽減されます(但し旅行業協会への入会金や年会費が必要です)。
第1種 | 第2種 | 第3種 | 地域限定 | |
---|---|---|---|---|
営業保証金(最低額) | 1400万円 | 220万円 | 60万円 | 3万円 |
新規登録の場合に登録通知を受け取って14日以内に納付し、その旨登録先行政庁に届け出る必要があることや、必要な弁済業務保証金分担金が年度によって変動した場合の差額の追加納付や取戻しについても営業保証金を供託する場合と同様です。
まとめ
旅行業は許可制でなく登録制ではありますが、以上の営業保証金または弁済業務保証金分担金制度への対応や、これに先立つ新規登録申請も必要書類も多く、容易な手続きではないと思います。
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