新民法 諾成契約化の進展 :要物契約と諾成契約
2020年4月1日に改正民法が施行され、契約に関する規定も変更されました。結論から言えば、全体として要物契約から諾成契約へのシフトが進みました。今回は、要物契約や諾成契約がどのような契約なのか、諾成契約へのシフトで契約書の書き方にどのような影響が生じるのか解説します。
要物契約・諾成契約とは
要物契約とは、契約当事者の合意だけでは成立せず、目的物の引き渡しがあってはじめて成立する契約です。旧民法化では、消費貸借契約・使用貸借契約・寄託契約・代物弁済契約4つが要物契約として定められていました。例えば、お金を貸す金銭消費貸借契約であれば、お金を受け取ることにより成立する契約でした。
諾成契約とは、契約当事者の合意だけで成立する契約です。旧民法下においても前述の4つの要物契約以外は契約自由の原則に基づき諾成契約とされていました。例えば、物の売り買いをする売買契約も合意だけで成立する諾成契約です。
民法改正による諾成契約化への流れ
前述した4つの要物契約も、民法改正により諾成契約化が進みました。
消費貸借
消費貸借契約は、借りる側が借りた物と同じ種類・品質・数量の物を返却することを約束しお金や物を借りる契約です。旧民法化では、お金物を受け取ることで成立する要物契約でした。
民法改正により、原則は要物契約としつつも(587条)、書面によって契約することでお金や物の引き渡しがなくとも契約の成立が認められようになりました(587条の2)。
使用貸借
使用貸借は、借主が無償で物を借り、使用後に返却することを約束する契約です。旧民法化では、物の引き渡しによって成立する要物契約でした。
民法改正により、合意のみで成立する諾成契約へと変更されました(593条)。
寄託
寄託は、物を預かり保管する契約です。聞きなれない契約かもしれませんが、銀行口座への預金やコインロッカーの利用は寄託契約に当たるでしょう。旧民法化では、寄託は要物契約とされていました。
しかし、寄託も民法改正により諾成契約となりました(657条)。諾成契約化したことで、寄託物を預ける前は契約を解除できる旨定められましたが、損害が生じた場合は賠償が必要となるケースもある(657条の2)ので注意が必要です。
代物弁済
代物弁済は、合意に基づき、本来返却すべき物と異なる物で弁済する契約です。旧民法化では、代物弁済は要物契約とされていました。
民法改正により諾成契約となりました(482条)。ただし、弁済を完了させるためには物の引き渡しが必要です。
諾成契約化を受けての契約書のポイント
諾成契約化が進んだことにより、簡単に契約が締結でき便利となった一方、そのつもりが無いのに契約が締結してしまうという不測の事態も発生しかねません。改正により電磁的記録によっても契約は成立する旨規定されたため(587条4項)、メールやチャットワークでも契約は成立します。契約成立の意思表示は契約書で明確に示すようにしましょう。
消費貸借契約については、合意のみで成立させるためには必ず契約書などの書面が必要ですから、お金や物の引き渡しをする前に契約を成立させたい場合はきちんと契約書を用意しなければなりません。
また、諾成契約化が進んだとはいえ、民法における諾成契約である旨の規定は任意規定のため要物契約が禁止されたわけではありません。要物契約としたい場合、契約書に特約として要物契約である旨明記しましょう。
まとめ
今回は、要物契約・諾成契約の概要や諾成契約化を踏まえての契約書のポイントを解説しました。諾成契約化により簡単に契約を締結できるようになったことは便利であるだけでなく不測の事態を招く危険性も有します。諾成契約とはいえ、口約束ではなく当事者の合意を現した契約書を用意することをおすすめします。
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