生産緑地 2022年問題とは (Vol.2)

前回は、生産緑地という制度が導入された経緯を中心にお話しました。

今回は、生産緑地の現状とその指定を受けるメリット・デメリットなどを見ていきたいと思います。

生産緑地はどこに、どれくらいあるのでしょう?

前回、生産緑地は大都市圏の市街化区域にあると書きましたが、詳しく言うと三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)の特定市にあるものが99%以上です。特定市とは東京特別区、三大都市圏の政令指定都市と、それらに準じた市街化された区域と考えていただければよいと思います。

特定市以外も含めた全国の生産緑地の総面積は、1万2500ヘクタール余りです(国交省 生産緑地地区の都市計画決定状況 H30.12.31現在)。

この面積は、およそ東京ドーム2800個分に相当するといわれ、そのうち東京都が約750個分で最も多く、次いで大阪府が約420個分、我が埼玉県が約370個分となっています。これらの都府県の総面積と比べればそれほど大きな割合ではないかもしれませんが、生産緑地が主に特別区、政令指定市の市街化区域という、宅地や事業用地としての価値が比較的高いところにあるということを考え合わせると、必ずしも小さい面積ではないとも言えそうです。

市区町村別では、①京都市 ②さいたま市 ③横浜市 ④名古屋市 ⑤川崎市 となっています。

そして、全生産緑地の概ね8割程度が1992年の改正生産緑地法施行直後に指定を受けており、これらが指定後30年を経て2022年に買取申出が可能となります。繰り返しになりますが、この時に指定解除となる生産緑地が高い割合で農地以外の土地として一斉に供給されると、供給過多となって宅地価格が大きく下落するかもしれない、というのが2022年問題です。

生産緑地のメリット・デメリット

これまでの項にある程度記しましたが、生産緑地を所有する農家にとってのメリット・デメリットを大まかに確認してみましょう。

メリット

生産緑地は大都市圏の市街化区域にあるので、土地価格は比較的高いです。そのため、固定資産税や相続・贈与税が宅地等と同様に取り扱われると税負担は非常に大きくなります。
生産緑地は

  1. 固定資産税が農地課税となる
  2. 相続税・贈与税の納税猶予の特例が受けられる

といった税制上のメリットがあります。

固定資産税では宅地並み課税に比べ農地課税の場合は税額が数十分の一から数百分の一程度に抑えられるといわれメリットが大きいです。
相続税については、被相続人が死亡まで農業を営んでいて、相続人が農業を続けている限り一部を除いて納税が猶予されます。また、納税猶予の特例を受けていた農業相続人の死亡により猶予されていた相続税の納税は免除されます(猶予、免除にはほかにいくつかの要件がありますが、ここでは省略します)。

デメリット

生産緑地は大都市圏の農地を緑地としての機能も含め保全しようとするものですから、所有者等には以下の農地としての義務や制限が課されます。

  1. 営農義務
    平成4年の改正生産緑地法により指定を受けた生産緑地は、市区町村長に買取申請ができるのが指定後30年経過後であり、それまでの間は生産緑地を農地等として管理する義務を負います。
  2. 行為制限
    生産緑地には、農業用施設以外の建物、工作物の建築や土地の造成などはできません。ただし平成29年の法改正で農家レストランや農産物の直売所などを設けることができるようになりました。
  3. 相続税・贈与税の納税猶予の打ち切り
    メリットの所で記した相続税・贈与税の納税猶予は営農継続が前提となっています。そのため、農業の継続ができなくなった場合や、生産緑地指定が解除になった場合などには、猶予されていた相続税等と猶予されていた期間に応じた利子税をさかのぼって納税しなければなりません。

 

上記の[3]はメリットの裏返しといえます。宅地価格の高い大都市圏の土地に関する税金であり、さかのぼって納税しなければならない相続税等と利子税は非常に大きな金額になることが想定されますので、納税猶予を受けてきた生産緑地所有者等の方にとって、今後を考える上での大きなポイントとなるといえます。

以上のように、生産緑地は3大都市圏を中心に比較的地価が高いところにあるものが大半です。ゆえに、固定資産税にしても相続税にしても、生産緑地指定を受けた税制上のメリットもまた大きなものでした。また、将来を考えると、空き屋や所有者不明土地の増加という現象を見てもわかるように、「土地は値上がりするもの」という神話は遠い過去の話になってきています。

一方、現在の生産緑地制度導入時には、市街化区域の農地は基本的には「宅地化すべきもの」と位置付けられていたのに対して、現在では農地や緑地に環境の保持・改善や、防災面での機能を期待する、という位置づけも強まっています。

次回は、そのあたりの動向も含め、変化してきた政策や今後の見通しなどについて考えてみたいと思います(・・・続く)

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