生産緑地 2022年問題とは (Vol.3)

前回(生産緑地 2022年問題とは (Vol.2))では、生産緑地の現状とメリット・デメリットなどを確認しました。

また、現在の生産緑地制度が導入された当時は、市街化区域の農地は基本的には「宅地化すべきもの」と位置付けられていたのに対して、現在では農地や緑地に環境の保持・改善や、防災面での機能を期待する、という位置づけも強まっていることにも触れました。

2022年問題を背景とした政策変化など

ご承知の取り、すでに日本は人口減少と高齢化が進む局面に入っており、宅地需要は沈静化し、都市農地の宅地化の必要性も低下しています。

一方で、その後の日本は、阪神淡路、東日本と2度の大震災を経験しました。また、地球温暖に伴う気候変動による豪雨災害や台風被害の頻発もあり、都市近郊における緑地や農地といった防災空間の重要性も一層増しています。また、行動成長期のような環境破壊が進む状況ではないものの、大都市圏における良好な住環境、都市環境の維持・整備も変わらない重要課題です。

このような環境のもと、都市農地に対する政策も「宅地化すべきもの」という認識から、「(都市に)あるべきもの」へと変化してきています。そこに、生産緑地の指定後30年経過を迎えるという状況も踏まえ、以下のような法改正が行われました。

生産緑地法の改正(2017年)

2017年の生産緑地法の改正では、主に下記の3つの政策が導入されました。

  1. 生産緑地地区の面積規要件の引き下げ
  2. 生産緑地地区における建築規制の緩和
  3. 特定生産緑地制度の導入

生産緑地地区の面積要件の緩和

改正前の生産緑地地区は、500㎡以上の区域とされていましたが、2017年の改正でこの面積要件について、自治体の条例で300㎡まで引き下げることができるものとされました。

また、土地収用や相続などにより生産緑地地区の一部が解除となる場合に残った面積が500㎡を下回ると生産緑地全体が解除されてしまう問題がありました(これを、「道連れ解除」といいます)。

道連れ解除になるとその所有者が相続税納税猶予を受けていた場合、高額な納税を2か月以内に行う必要が生じ、所有者には大きな負担になります。これに対し2017年の法改正後は面積要件が300㎡に引き下げ可能になったこと、また運用で同一または隣接する街区内に複数の農地がある場合には一団の農地とみなして生産緑地指定が可能とされたことなどにより、道連れ解除が回避し易くなりました。

生産緑地地区における建築規制の緩和

改以前は、生産緑地地区内に設置可能な施設は、農林漁業を営むために必要で、生活環境の悪化をもたらすおそれのないものに限定されていました。具体的には、農業生産や集荷のための施設、生産資材の貯蔵・保管施設などだけが設置可能でした。

改正後は、これらに加え

  1. 生産緑地内で生産された農産物等を主たる原材料とする製造・加工施設
  2. 生産緑地内で生産された農産物等または[1]で製造・過去されたものを販売する施設
  3. 生産緑地内で生産された農産物等を主たる材料とするレストラン

が設置可能となりました。

特定生産緑地制度の導入

生産緑地の指定から30年を経過する以後も、引き続き生産緑地が保全され良好な都市環境の形成が図られるよう、2017年の法改正により「特定生産緑地」の制度が導入されました。その概要は・・・

  • 生産緑地の所有者等の意向を基に、市町村長は告示から30年経過するまでに、生産緑地を特定生産緑地として指定できる
  • 指定された場合、買取の申出ができる時期が「生産緑地地区の都市計画の告示日から3-年経過後」から、10年間延長される
  • 10年経過する前であれば、改めて所有者等の同意を得て、繰り返し10年の延長ができる
  • 特定生産緑地の税制については、従来の生産緑地に措置されてきた税制が継続される
  • 特定生産緑地に指定しない場合は、買取りの申出をしない場合でも、従来の税制措置が受けられなくなる(激変緩和措置あり)
  • 特定生産緑地の指定は、告示から30年経過するまでに行うこととされており、30年経過後は特定生産緑地として指定をうけることはできなくなる

というものです。

都市農地貸借円滑化法の制定(2018年)

生産緑地法の改正に続いて、2018年には都市農地貸借円滑化法(正式名:都市農地の貸借の円滑化に関する法律)が制定されました。

従来農地法により、期間の定めのある農地の賃貸借は、期間満了の1年~6か月前までに当事者が更新拒絶の通知をしなければ同一条件で賃貸借をしたものとみなされる、とされていました(農地法17条)。

加えて更新拒絶の通知をするには知事の許可が必要であるため、農地所有者にとっては、農地はいったん貸してしまうと容易には返してもらえないこととなります。加えて、相続税納税猶予を受けている場合には、その農地を賃貸することで納税猶予が打ち切られ、相続税と利子税の納税が必要となることもあり、農地の賃貸借を行うには高いハードルがありました。
 
これに対して、都市農地貸借円滑化法による農地の賃貸借では、賃借希望者が耕作に関する事業計画を市区町村長に提出して認定を受けることにより、生産緑地に関して更新のない賃貸借契約を締結することが可能になりました。
 
また市民農園の開設者が農地所有者および市町村長と協定を締結するなどした上で農業委員会の承認を受けることで、従来より円滑な手続きで、市民農園の解説のために農地を借りることができる制度も併せて創設されています。
 
これらの対策により、生産緑地の所有者は自ら営農しなくとも、農地を生産緑地として維持していくことを可能となります。
 
 
 
今回は、生産緑地や都市農地が、社会的な環境変化により位置づけが変ってきたこと、またそれを受けて都市農地をめぐる政策が変化してきたことによる、法改正の経緯等を見てきました。
 
特定生産緑地制度と、都市農地貸借円滑化法がその中心になりますが、今回はその制度の概要にとどめました。それらの詳細な内容については、また稿を改めて解説してみたいと思います。
 

まとめ

生産緑地について、特定生産緑地の指定を受け営農を継続する、買取申出をする(多くの場合、結果的には行為制限の解除となると思われます)、都市農地貸借円滑化法を活用して賃貸する…など、選択肢はいくつかありますが、いずれの場合も初めての書類作成等に頭を悩ませることになるかもしれません。

また結果的に生産緑地指定が解除された場合には、農地転用をへて利活用を図っていく必要があります。

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